オフィスの華には毒がある
「何で、なかったことみたいに、するんですか……?」


言いながら、理由の分からない涙が溢れそうになる。


涙がこぼれたら負けだ、と急に謎の強気が沸いてきて、主任の顔をぐっと、見上げる。

いつも、なぜかちょっと困ったように見える、綺麗な目。



「……ほんとだよな」


ふ、と笑ったその顔は、とてもとてもかわいらしくて。

二人を取り巻く空気が、しんと、静かになった気がした。

主任の綺麗な顔から、笑みが消える。吸い寄せられるような、不思議な色の瞳。


「…………ンッ……」



わたし達は、二度目のキスをした。
どちらからともなくするキスは、とても自然で。
ドキドキするけど、安心感も沢山あって。


やっぱりわたしこの人のことが好きだなぁって、身体中で実感するような。


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