オフィスの華には毒がある
ぽんぽん、と優しくその手がわたしの背中を叩く。


「……どうどう」


……いや、だーーーーーかーーーーーらっ。暴れてませんよ?わたし。
百歩譲って、前回のキスは、完全にわたしからのアレなんで、なだめられても仕方ないけど。
今回は、違うじゃない?
どちらからともなく、ってやつじゃない?いやむしろ後半はそっちがぐいぐい来てるじゃない?!


「……なんなんですか、それ」


ちょっと身体を離して聞いてみる。急に冷静になった自分を感じつつ。


「いや、なんかこう、濁しておかないと、暴走しそうで、俺」


あ。なーんだ。自分のために、か。


「ブログ見ちゃってまーす、ってうしろめたさから、『本当は、遠藤さん気付いてて、キモいわこの変態!って思って俺のこと、試しているのかも』って常に思ってたからね」


思わず笑ってしまう。


「そんなわけで、突然のキスも、絶対告発される準備だ、と思って。手を繋ぎたくて仕方なかったあのときも、酔ったから介抱してくれって言えば何とかなるかなとか」
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