オフィスの華には毒がある
ほんのちょっと、心が浮き立つようなことがあって。

でも、浮かれないように戒めてたつもりなのに、なんでこんな目に遇うんだろう。


わたし、そんなに悪いこと、したかな?


じわ、と視界が涙でぼやける。


コーヒーなんて飲む気はとうに失せて、身体をぎこちなく動かしながら、そっと自分のデスクに戻ろうと試みる。


「んじゃお前、マジで落とせたらコーヒーおごれよー!!」


「お前のそのプライドの高さ、なんなの?!落とせない女はいないってか」


そして、どっと沸き起こる笑い声。


その笑い声に押されるように、走り出すわたし。

コーヒー?!


コーヒーをおごってもらう為に斉木くんはわたしを落とすとか言ってるの?!


100万円……いや、10万円……いやいや、千円?

お金でも勿論嫌だけど。それでも、まだそれに目が眩んで、なんて思い込むことも出来る。


でも、ダメだ。

コーヒーだって。


コーヒーをおごってもらうために、わたしとヤろうとしたんだって。


考えれば考えるほど、涙が止まらなくなってしまう。
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