オフィスの華には毒がある
「先輩、面倒な仕事抱えて、しばらく残業続きですもんねー、お疲れ様でっす!」


まだ今夜も残業するなんて決まった訳じゃない、と言おうとして止めておく。


視界のすみにちらりと見えたのは、明らかに荒れているわたしのデスク。


書類、どんどん片付けなくちゃ……まぁ、目の前に、片付けるべき仕事がある方が今のわたしにはありがたいかもしれないけど。


環にじゃーね、と手を振り、自分のデスクに向かおうとすると……



「すみませぇん」


聞き慣れない甘ったるい声に、足を止めるわたし。


はて?


どうやらわたしの背中に向けて発せられたらしきその甘い声の主を探し、ゆっくりと振り返る。

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