オフィスの華には毒がある
気分転換も兼ねてコーヒーをいれようかな。


けれど、給湯室のポットはとっくに空っぽで。


喫茶スペースまで足を伸ばそうか、と思い立って踏み留まる。


自販機にコーヒーを買いに行って、隣の喫煙所から斉木くんの声が聞こえてきたのは今日のこと。


思い出したくもないのに、また胸の辺りがずんと重くなる。


わたしは、たかがコーヒー一杯のために、落とせるかどうか賭けられたオンナ。


斉木くん、もっといい子だと思ってた。

チャラチャラしてたけど、みんなにいい顔してたけど、少なくともかけてくれた労りの言葉や優しい言葉は本物だと思ってた。

やさ優しい笑顔から、人柄が滲み出てると思ってた……なーんて。わたしが都合よく解釈していただけかぁ。バカみたい。
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