オフィスの華には毒がある
好きだったのに、あの喫茶スペースに行くのがトラウマになってしまいそう。


……ダメだ、こんなんじゃ。よし、いこう。

自分を奮い立たせて給湯室を飛び出す。


わたしは、あそこの自販機の中のカップで出てくるコーヒーの、オリジナルブレンドが好きなんだ。

残業していて、給湯室のお湯がもうないし、あそこに買いに行くしかないんだ。

もう遅い時間だし、斉木くんは元々残業しない人だし、だから、大丈夫。


あんな人のせいで、自分の楽しみをこれ以上減らしたくないし。



よし、大丈夫。


どうにか鼓舞して、喫茶スペースへと向かう。


人のいない廊下は、やけに長く感じられる。



「あ、お疲れーーー」


不意に声をかけられて、身体がびくんと震える。
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