オフィスの華には毒がある
あの次の日、主任は安定の冴えないいでたちで。


『昨日はありがとうございました』と言ってはみたものの、


『合意の上だった?だとしたらごめん』とか言っちゃう天然ぶりで。


結局、それっきり。


別バージョンの主任を見ることもなく、斉木くんを見かけることもなく、日々が過ぎてしまった。


……これから、どうなるんだろう。


仕事が落ち着いてしまった今、急にそんなことを思い立ってぞわぞわする。



わたし、平和な日々が送れるだけでいいのに。


ドラマチックな恋なんて望まない。


波瀾万丈なんて興味ない。


普通に仕事をして、普通に生活して、普通に趣味を満喫して。


それだけで十分なんだけど。



あ、忘れた、と思い、お風呂上がりのボディークリームを今更塗り込んでみる。


既にかさかさになった肌にクリームは中々馴染まなくて、上の空な自分に嫌気がさしつつも、何度も何度もクリームを滑らせた。
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