藤くんが今日も冷たい件について(仮)【完】
「美波ちゃんも食べて〜」


そう言ってクッキーの入ったタッパーを私に差し出してきた佐伯さん。


私はそれを一口食べる。


……別に佐伯さん一人が作ったわけじゃないんだろうけど。


みんなで作ったんだろうけど。



「………美味しい」


「ほんと?よかった〜」



佐伯さんは私の一言に心から喜んでいる。


けれど。


美味しいのに悔しいという感情が生まれるなんてことがあるのだろうか。


そんなことを考えている私は本当に醜い。


恋をすると女の子は可愛くなるっていうけれど、私にはそれは当てはまらない。


だって私の場合は


どんどん人に対して醜態を


露わにしていくばかり。


そんな私はこの子に勝てることなんて


本当にない気がする。



「……ねぇ、美波ちゃん」



佐伯さんに名前を呼ばれ、意識を取り戻す。


なんてひどい被害妄想。


こんなんじゃ、ダメだダメだ。


私は精一杯の作り笑顔で返事をした。



「な、なに?」


「あのね……ちょっと話たいことがあるんだけどいい?」




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