藤くんが今日も冷たい件について(仮)【完】
「おい、ブスウサギ。どうしたんだよ」


そう暴言を吐いて話しかけてきた影山修二の声にも気づかず私は足を動かすことができずにいた。



胸が……まるで何かに締め付けられているかのように……ギュッとなって……



ーーー苦しい。



影山修二も私の目線に気づき、同じ方向を見た。

影山修二もその姿を見た瞬間、全てを悟ったようだった。



「影山修二、先戻ってていいよ。私後から行くから」


「……あっそ。じゃ」



そう返事をし、影山修二は私の横から離れた。


私は影山修二とは逆の方向へ歩き、非常階段の扉を開けた。


そして静かに扉を閉めた。


3階のそこは着ぐるみを着ていても冷たい風が吹きすさんでいる感じがした。


私はさっきの出来事をゆっくり頭の中で反芻していた。


藤くんと佐伯さんが抱き合っていた。


っていうことは……


たぶん佐伯さんの告白は


うまくいったってことだよね。


藤くんはきっと佐伯さんの想いを


受け入れたんだ。


そうだよね。


そんなこと前から分かっていたことじゃないか。


藤くんの佐伯さんを見る表情を見たあの時から……


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