elevator_girl
その子は、こんどははっきりと僕らを見た。
僕等も演奏を終えて、彼女の方へと歩みを進めた。
のどかな春の午後、だけれども。
心は踊っている....。
僕は、何か話しかけようそとしたけれど
言葉が見つからず、ただ、その子のことを見ていた。
「駅前で、見てくれてたでしょう?お姉さん」シュウが、ストラトを横抱えにして。
こういう時、彼がいると便利だ。気さく、と言うか、気楽と言うか
まるで気にしないで誰とでも話しができて、打ち解ける事ができる。
隣に居る僕も、おかげで助かる。
僕は、ピアニカを抱えたまま、まだ、黙っていた。
「....Azymuthをライブしてた....。」と、その子は言う。
それは、睡蓮の蕾みが花開くような声だった。
シュウは、驚いたように「そう!fly over the holizon。良く知ってますね。」
「クロス・オーヴァー・イレブンでしょう?」
にこやかに微笑みながら。
風が、さっと渡る。
僕の火照った頬を爽やかに癒す。
彼女は、左手で流れる髪を抑えて。
「そうそう。あ、こいつは柳、僕は深町。丘の上キャンパスの3年。
....なんて呼んだらいいかな、お姉さんってのもなんだし」と、フカマチ・シューは言う。