elevator_girl
「リョウコって呼んでください」


「そう、リョーコさんか....なんか、爽やかでいいお名前ですね。5月に似合いで。
あ、まだ4月か....。」

シュウは饒舌になった。たぶん、照れ隠し半分、嬉しさ半分と言った感じか。
僕は、シュウが良く喋るので、ただ、黙って聞いている、微笑んだまま。



ちょっと騒がしいかな、と思う深町の話に、彼女は迷惑がる事もなく
柔和に受け答えしている....。

僕はただ、その声を聞いているだけでも十分だな、と思った。


「ステキな演奏だった。」と、彼女がそう言ってくれたので
シュウはますます調子に乗って


「あ、そうですか?よかったらもう1曲....あ、どうです一緒に。」



え、でも....とか言う彼女に、シュウはMA-1の内ポケットから
カスタネットを取り出して、シャドウズの「Spring as nearly here」の
リズムパターンを軽く叩き、彼女に手渡した。


「そんな感じで行ってください。そう、、タン♪、タララ♪...タ♪タ♪タ♪。
で2拍。3連のとこは、上手く打てたら4連でもいいですよ。」



....と、半ば無理矢理に(笑)パーカッションを担当させ、シュウはギターを抱え
ギターにフランジング・エコーを掛けた。 ポーン、と響いて良い音。

E(4)-F-G-F-E....D-E-F-E-D....と、有名なフレーズを指慣らし。


彼女の表情が明るくなる。


「あ、知ってます?この曲」とシュウが言うと、にっこりと頷いたので、シュウは


「気が向いたらコーラスでも入れてください、ロングトーンか何かで、『あー~...』」とか。

その「あー」が、とちゅうひっくり返っていたので、彼女はクスリ、と笑った。

なんとなく僕は、その笑顔を見ていて ほんわか、とした気分になる....。
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