elevator_girl
わはは、と笑い声が響く。
だが、スーパー・7の排気音が大きいので
ふたりの他にはその笑い声は響かない。
走っている間は、ツイン・トリップだ。
「ほんとはね、俺が日曜学校に行ったんです。技術学習で。
その時に。」と、深町が言うと
「その時にナンパしたのね。」と
諒子はイタズラっぽく。
「信用ないんだなぁ。」と深町は笑顔で。
「だって、なんとなく...。」と
諒子がくすくす笑いながらそう言うと
「見た目だけですよ、見た目。
松之なんかね、ああ見えても厚木に帰ると
ガールフレンドが一杯居るんです。20人くらいかな。」
「嘘でしょ?」
「そう。よく分かりましたね。」
「だって、20人っていくらなんでも....。」と、諒子は流れる髪を
左手で抑えながら。
「んでも、ペンフレンドは居たらしいですよ、高校時代。
あいつ、言葉が得意でしょう?
だから、言葉、文章が得意な人に興味があるって言ってて。」
スロットルを緩め、消防署の前の赤信号に向けて
深町はスーパー・7を減速させる。
「そっかぁ、じゃ、私は駄目だな....文章って得意じゃないの。」
と、諒子は微笑みながら。