elevator_girl
甲高いエキゾースト・ノート。
低いキャブレターの音。
コーラスを歌っているかのようで
さっき、大学の構内で楽しんだ
コーラス・ミュージックを想起させるには十分な事象だった。
どことなく、楽しい午後......。
翌朝は、雨だった。
梅雨時だから雨も当然なのだが....
深町は楽しかった。
オートバイで通学せず、バスに乗って区役所通りを東へ。
もちろん、スーパー・7もガレージに入れたままだ。
雨の日のオープンカーほど憂鬱なものはないからだ。
鬱陶しい天気、換気が良くないので窓は曇る、
黒い幌が視界を遮る....。
しかも、アルミ・ボディは錆びる。
白く粉が吹いたように酸化すると、磨き直すのはとても厄介だ。
それで、おとなしくバスに乗って、南北大通りを目指す。
途中、区役所の前を通ったり、高校の前を通ったりすると
昨日の楽しかった記憶を思いだし、意味もなく微笑みが浮かぶ。
カナちゃんは、焼き餅を妬くかな......そんなことないよな。
俺たちは、信じ合っているんだから。
だから、諒子にドライブを誘ったとしても
それは勿論、親友・松之を思ってのことだった。
..あいつ、なんて言うかな....。
友が喜んでくれるといいな、と深町は思った。