elevator_girl
一方の松之は
いつもと同じように、すこし早めに家を出て。
駅前のバス停から、丘の上キャンパス行きのバスに乗る。
なぜか、いつも夏名と一緒になる。でも
昨日までは華やいだような気持ちで夏名を見ることができたが
今日からは、そういう気持ちにはなれない。
..だって、深町を。
ほんの少しだけだけれども、松之も期待はしていたのだ。
男の愚かな自尊心だが、夏名の笑顔が
自分への好意、と妄想を抱いていた部分もあったりもした。
生き物だから、それは仕方ないことなのだが....。
まだ、松之は若い。
そう、客観的に自分を突き放して見ることが、まだ出来ない。
言ってみれば、それは彼の少年の部分である。
夏名は、昨日までと同じつもりで
「先輩、おはようございます。」と言い
松之も「ああ、カナちゃんおはよ。」と言っても
松之の心は、どこか醒めた気分だった。
期待を失う、と言うのはそういうものだろう。
仮に、実現不可能な夢であったとしても
夢は、あったほうがいいのだ。