elevator_girl

窓硝子を流れてゆく雨滴のように
時とともに、思い出は消え去る。

雲のように、風のように。

雨粒を掌に受け止めてみれば
自然に、しみこんで行くだろう....。

掌で受け止めたら、それは、思い出にはならない。

僕のてのひらで、それは、生まれ変わるんだ...。と
深町は夢想した。


いつかは、そういう時が訪れるのだろうか?


深町は、そんな日が来るとまだ実感する事ができなかった。

....まだ、今は。

流れ去る雨滴を傍観するように
綺麗な思い出に、なっていく筈の
出来事を、大切にしようと
そう思っていた。




バスは、区役所通りから
南北大通りに出、丘の上キャンパスへの
登り坂へ向かう。


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