elevator_girl
「おはようございます(ッ)」、と、(ッ)が、入るような感じの喋り方が独特で
なーんとなくアニメキャラっぽいところが、1年の男子学生の間で人気だった。
特に、ご本人がアニメキャラを意識してる訳ではないのだけれども
これは世代、と言うか...子供の頃にそういうアニメを見ていたから
そういう刷り込みがあるのだろうか、とも思う。
誰にでも愛らしく振舞う子なので、皆に人気があった。
僕も、この子と話している時には「可愛いな」と思う。
そういうものだと思う。
生態学の本を見たり、文化人類学や比較行動学の本を斜め読みすると
どうやら、男の僕から見る女の子の可愛らしさ、と言うのは
若年の個体に対する庇護の性質から来る物だろう、と思う。
喩えて言うなら、赤ちゃんを可愛いと思うようにプログラムされているのと同じだ。
年を重ねた女の人が、何時までも若々しくありたいと願うのも道理だ。
だから、大抵の女の子にはそう思うように出来ているのだろう.....。
そこまで考えて、はた、と思う。
僕にとって、昨日のリョーコさんは何なのだろう?どういう存在で惹かれるのだろうか、と。
解らなくなり、ふと考えこむ。
「先輩?バスきました。」
カナちゃんの声で我に返る。
海老茶と白の古ぼけたバスが、バス停に入ってきて
これから、また、いつもの日常のはじまり。
でも、何かが違う、ような気がする。どこかに希望があるような....
そう、古い神話にもあった。女神が禁断の箱から取り出したのも「希望」だったっけな....。
と、僕は、小雨がぱらつく舗道を見下ろしながら、床油の匂いがするバスのステップに立ったまま
桜花が舞い降りる様を思い浮かべていた。