elevator_girl
老婦人は、まあ、と驚き
普段は、人様から食べ物を頂くことはない子なんですよ、
余程あなたが気に入ったのね、と...
優しい微笑みで答えた。ありがとうございます。私は
見えないから、この子がひもじく思っているのに
気づきませんでした。ありがとう、ありがとう、と
何度も礼を述べた。
しかし、同時に深町は思う。
まだ、後ろを振り返るほど生きてはいない、
行ける所まで前を見て進むんだ、と。
過ぎた事を振り返るのは、年老いてからで沢山。
そんな風に。
今、過ぎて行く時を大切に生きよう。
新しく出会った人をも、大切に生きよう。
もちろん、大切な人は、あくまで特別に大切なのだが....
結果として残った進行が、俺の人生だ。
筋書きなんていらない。
区役所通り経由、大学行きのバスは
丘の上キャンパスへの登り坂をゆっくり登る。
いつだったか、深町がパフォーマンスして(?)
夏名が激昂した、あのトンネルをくぐって。