elevator_girl

バスを降車するのは、盲導犬を連れた老婦人。
以外なほど、さっ、と席を立って
犬と共に、降車口、前扉に向かった。
定期を運転手に見せ、下りようとする。

バスの出口には、もうひとつ縁石がステップになっている。
それに気づかないと、たぶん....転倒。

声が出るより先に、夏名は立ち上がり
駈け寄ろうとした。

だが....。


盲導犬は、さっきのひもじそうな表情と違い
凛々しい表情で、老婦人を守っている。
歩みを進めてはならない、と
老婦人の前に回り、体で足を止めている...。


自分より遥かに大きい人間の足が当っているのだから
快適な筈は無い。
しかし、凛とした表情で
老婦人の顔を見上げている...。


婦人はそれに気づき、足もとを探る。
バスの床の少し先に、縁石がある事に気づく。
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