elevator_girl
「使命を果たしてる感じ、かな...あのご婦人への愛情があるね。」
と、松之は文学的に言葉を修飾すると
夏名は、愛、と言う言葉に敏感になっているのか
すこし、頬を赤らめたように
「いいなぁ、そういうの....。」と、にこにこしながら
車窓を眺めた。
バスの磨かれた窓硝子に、夏名の柔らかな表情が映っている。
バスは空いてきて、ふたりのそばには人の気配は無い。
エンジンの音が響いていて.....。
彼等の会話は、宙に消え
言葉を耳にする者は無い。
「カナちゃんだって。」と、松之はそう言うと
窓硝子に映っていた、夏名の表情がすこし、硬くなって。
楽しい夢から醒めたような、そんな感じにも見えた。
夏名は、松之の方へ降り返り...かぶりを振る。
「いいえ、私なんて。まだ、心配なんです。
ずっと、この先.....続くのかな、って。」