elevator_girl

"私"と言う、夏名に
昨日とは異質な物を感じた松之だったが

「そんなことないさ、大丈夫だよ。」と
言葉をつないだ。


....あいつは、そんないい加減な奴じゃないさ。
松之には、男と男、の勘でそう言った。

一見、いい加減そうに見えて、あいつは真面目さ。
愛に関しては。


そう言いたかったが、バスの中でもあるし
明言は避けた。








深町を乗せた古ぼけたバスは
ゆっくり、ゆっくりとアイボリーとエビ茶のボディを揺らしながら
丘の上キャンパスの停留所へと、止まる。
床板に塗られた油の匂い。それが
雨を弾いて。雨の匂いと混じり合って
独特の、雨の日のバス、と言う雰囲気を醸し出している。
運転手は、停留所のサイン・ポールに
今度は降車口の前端を付ける。
< 158 / 213 >

この作品をシェア

pagetop