elevator_girl

夏名が居る手前、松之にも少々の自尊心が頭を擡げていたのかもしれない。

愚かしいかもしれないが、若い男、と言うのはそう言うものだ。


「じゃ、行かないのか?」と、深町は少し気分を害する。


「いや....そうは言っていないけど。」と松之は深町の顔色を見て。

「ま、いいか、それじゃ決まりだな。今度、晴れたら。そうしよう」と
楽天的な深町はまた、笑顔になる。

カナちゃん、どう?と、深町は夏名に尋ねる。

はい、私は....と、夏名は頷いた。


でも、夏名も内心、すこし釈然としない.....。






その、夏名の表情の翳りに気付いた深町は
「大丈夫。諒子さんは松之が....だから。俺は、カナちゃんだけさ。」
と、松之に気付かれないように夏名のみみもとで囁く。」

驚いたように見上げる夏名に、深町は、にっこりと微笑んだ。

「安心したか?」と告げる。
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