elevator_girl
夏名は、満面の笑みで、うん、と頷いた。
素っ気ない黒い髪がさらり、と揺れて
夏名は、あどけなく微笑んだ。
松之は、遠くからその様子を、気付かない振りをして
背中で感じていた。
いいなあ....と。無条件に信じ合い、許し合う事の
喜びを傍観した。
自分は、あんな風になれるのだろうか?と自問しても
何故か、自分と諒子がそういう情景にある事が
たとえ夢だったと仮定しても、リアリティを得られないのだった。
それが何故かは、松之にも分からなかった。
「でも、どうして....?」夏名は、歩きながら
俯き加減に言葉を、辿々しく紡ぐ。
「どうしてって?」深町は、穏やかに微笑みながら
俯いている夏名と同じペースで歩く。