elevator_girl
その言葉に、夏名は返答をしなかったので、深町は
「うん、諒子さんはね、俺にとっては『花』のような存在なんだ。
花は、愛でられる運命にある。当然に。
野に咲く花を、手折りて行くのは俺の趣味じゃない。
ずっと、そうして野に咲いていてくれれば...って思う。
野の花を愛でるのは、別に俺でなくてもいいんだ。
野を歩く誰かでもいい。」
夏名は、その言葉を反芻するように考えていた。
「でも、俺は人間さ。花を愛でる心ももちろんあるけど
人を愛する心も持っているさ。だから、人と愛しあって生きたい。
その相手は、やっぱり俺の事を真剣に思ってくれる人がいいのさ。」
「でも....。」と、夏名は疑問。
「あの人が、もし、先輩の事だけを思ってくれたら?」
と、当然の疑問を深町に投げる。
深町は、優しく微笑みながら
「大丈夫。そんな事はないさ。『花』はいつまでも花なんだ。
花であり続ける事を捨て去る事はないんだ、歴史的には。」
...と、深町は松之に聞いた話を夏名にした。
それは、古い中国の言い伝えだ。