elevator_girl
「そういうんじゃなくて、この絵描きさんみたいに
一生懸命な夏名ちゃんを選んだんだよ。」
夏名は、笑顔になった。
しかし...もし、諒子が夏名と同じ愛の持ち主だったら?と言う
設問があるとこの説得は無意味になる。
言葉などと言うのは不完全なものだ。
人の心を語り尽くせるほど便利なものではない....。
雨の季節はまだまだ続く。
だからと言って、憂鬱、なんて言うのは
些か画一的な発想だろう。
雨には雨の、曇りには曇りの。
それぞれに、自然は違った表情を見せる。
都会には自然が無い。などとよく言われるが
それは、美しき里山、などと言うイメージに
囚われた表現に過ぎない。
コンクリートの罅割れに、ひそやかな花が咲いていたり。
舗道沿いの街路の紫陽花が、色を変えていたり。
都市にも、それなりに季節感と言うものが存在している。