elevator_girl
以前から漠然とそう思っていた。この春の出会いはたぶん、その起爆剤。
松之の中の正義感は、恋愛、の感覚を得て、それを慈愛、として展開した。
彼の脳裏を、大学構内に張り出されていた行政書士試験案内の張り紙がかすめる。
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試験日:11月第2日曜日
受験資格:不問
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とあった。司法試験なら大学を卒業してからでないと受験できない、だから今、
とりあえず、なんでも良いから挑戦したい、と思った。
「どうしたんですか?先輩?...」
夏名は、黙って考えこんでいた松之を気遣う。彼女なりの感覚で。
そんな夏名をやはり可愛いと、松之は思う。「今」の感覚で現世を生きている。
それは当たり前の感覚、普通の若い女の子のありのままの姿。
........。
松之は、ため息混じりに窓の外を流れる雨滴を眺めた。
....リョーコさん....だったら。
夏名のような普通の女の子とは違う
どことなく現世から遊離したような存在感、と松之は想う。
天来の..ような....?
そう連想したのも、彼の血が為せる技かもしれない。
もし松之が英国人だったら、Angelと連想したかもしれない。
無論それは、恋する心が生み出す幻想である。
しかし、渦中にあるものにとって、そうした幻想ほど甘美なものはなく
その幻想を現実、と想うものなのだろう。....。