elevator_girl
「おーい、じゃないよ、こら、シュウ。」
松之は、ちょっと怒った口調で。
「なんだぁ?どうしたの、マツユキくん?」
深町は、ちょっとおどけて答える。こんなところは
彼一流のユーモア、(の、つもり)。
「危ないだろ、あんな事して。」と、松之は憮然と。
「そうかねぇ....オートバイ乗り ってあんなもんじゃないか?」
と、深町はごく平然と。
「危ないです!あんな事はやめてください!」
突然、夏名がソプラノで半ば、シャウトっぽく叫ぶので
松之も、深町もちょっと唖然として、夏名を凝視した。
「夏名ちゃん....?」
「カナ、ちゃん....?」
「心配したんですっ。死んじゃうかと思ったじゃないですか!」
本気で怒っているのか、夏名は顔を強張らせて。
瞳にうっすら涙すら滲ませていたので、松之も深町も
もう、何も言葉を掛ける事ができなくなった。
ひとりで、キャンパスへの登り坂、ちょっとした林の中にある
その道を登っていった夏名の後姿を見送りながら、ふたり....
「ああ、驚いた」と、松之。
「うん、びっくりしたな」と、深町。
「なんかあったのかな....」と、深町は言う。
さあ、知らないけれど...と、松之は答える。
ほんのさっきまで喜んでたのに、と、松之は
バスの中でも情景を話した。