elevator_girl

そうか、と、深町は笑いながら
「でも、ああいう子と結婚すると結構....楽かもな」なんてヘンなことを言うので
松之はなぜ?と尋ねてみた。

ちょっと興味があったのだ。


深町はちょっと困ったような顔をして「うん、だってあの様子だからさ...
今だってしちゃいけない事してたのは俺の方だしな。結構コントロールされるんじゃないかな」
なんて、言うので、松之はまた、笑い出したくなる。


自由を絵に書いたような深町が、制御されたいと思うなんて。

そういう意味の事を松之が、深町に言うと、彼はまた困惑した面持ちで

「いや、俺は自由なんかじゃないよ」と。真面目に言うので松之は思わず吹き出した。


なんだお前、俺が真面目に話してるのに。コノヤロー、と深町が怒るので
松之はなんだか愉快になって、からかうように走って逃げた。

子供の頃のように。


子供の頃、シュウと一緒だったら楽しかっただろな...そう思いながら。





丘の上に向かう急坂を松之と深町は、駆けだして。
追いかけごっこをしている子供みたいに。

雨あがりの湿気がすこし蒸し暑く感じられる
陽気になってくると、この地にもそろそろ
初夏の兆しが見え始めてくる。
ちょっとした森の中、みたいな坂道を登りきると
左手が教育棟、道を挟んで右手が
雛壇地になっていて、そちらが理工学棟だ。
雛壇の1段目が広場になっていて、大きな銀杏の木と
金魚が泳いでいる緑の池がある。
向かって右手が付属図書館、道を挟んで
雛壇をもう一段登ると、そこが大学生協のある棟。
中庭は吹き抜けの向こう、内側の階段地にある。
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