elevator_girl

「おー、わりぃわりぃ、松?なんだ、どうした?」シュウは、無神経に雰囲気を壊す(笑)。

僕は、折角Wonderful-momentに感激していたのに。とムッとしてシュウを睨む。

その隙に蜃気楼のように、彼女は消えてしまっていて

どう目を凝らしても、見つからなかった。


春霞 桜花舞散る 昼下り...

あれは、儚き幻影なのだろうか。と、僕はモノ・ローグ。

気づかなかったシュウは、意味ワカンネー、と屈託無く笑っている。
そこが彼のいいところだけれども。



「....いま、いいとこだったのに!」と僕は、シュウに言う。


「ああ、ワリィな。なんだ?いいとこって。」シュウは、無神経っぽいが、ざっくりとた生成りのコットンみたいないい奴だ。

今日は、春だと言うのに時代遅れのMA-1ジャンパー、それにストーンズのワッペンを貼ったやつ、もう10年は着てるような古着、それにユニクロのコーデュロイ、ぼろぼろのベージュのを穿いている。

いつもみんなにからかわれるのだが、なんか想い出があるらしく、その格好を崩さない。
そういうcoreがある感じの彼と僕は、なんとなく同調する感じ。

彼は東京生まれの東京育ち、気取りのない下町ッ子、3代続いた寿司屋の跡取の筈、だけど
中卒で店を継ぐのが嫌で出奔、今名乗ってる苗字は親戚の叔父さん、(ミュージシャンだという話)の苗字だと言う...訳分からない(笑)奴だ。


僕はと言うと絵に書いたような田舎者で、生まれも育ちも青森。だから文学部なのかと言われるとその通りで、子供の頃から本ばかり読んでいた。本を読みたくて幼稚園を中退したような、
そういう人間。これがどうしてシュウみたいな奴と仲良くなれるかと言うと、やっぱりそれは音楽って言う言葉が解るから、なんだ。

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