elevator_girl
11時からの講義が一段落して、昼。
深町は、大学生協の前、階段地にある広場で
のんびりとしていた。
雨上がりだったので、木のベンチは湿っていたが
元来軍服であるαMA-1は、ナイロン・サテン生地なので
多少の湿り気は気にならない。穿き古したリーバイス502xxも
それを気にするほど、でもなかった。
芝生になっている階段状の広場は、4月の太陽によって
少しずつだが乾いてきていたので
深町は構わず、生協で買ったポテト・フライと珈琲を抱えて
下から2段目のベンチに座った。
これを昼食の代わりにして、すこしココで眠ろう。
なぜか、ゆうべから神経が昂ぶって、良く眠れなかった。
彼自身に自覚が無く、どこか心の奥底でエモーショナルな衝動が
収まらない、そう言う感じだった。
....ま、春かな。
時々、春になると
そういう事があったから、別段気にするまでもなかったのだが.....。
無造作に、ポテト・フライを数本つまみ、口に放りこむ。
油の匂いが広がる。
シンプルなこの料理、ともいえない食べ物を深町は気に入っていた。
....単純だから、飽きないんだよな、たぶん。
生きていくことも、このくらいシンプルならいいのにな。と
深町は、そう思った。
ほとんど食べ終えた頃、視界の隅に
特徴的な歩き方の人物が目に入る。
...あ、まずいな....。
と、深町はちょっと、思ったが....。