elevator_girl


「先輩っ、..あ、お昼ちゃんと食べてないんですね、また。
学食で食べればいいのに...。」と、にこにこしながら言うのは、今朝の事など忘れているのか...
夏名である。


この子の、なんとなくマネージャーっぽい気の使い方は、まあ、ちょっと、深町にとっては
気に障るところもあった。でも、だからといって追い払うような、そう言う性格の彼ではないし
そもそも、可愛らしく女の子が懐いてきて、そういう事を言われれば断れる筈もなかった。


「あ、うん、カナちゃんはお昼済んだの?」と、深町は、無地の茶色い紙袋にポテト・フライと
珈琲を詰めこんで。
夏名の目に触れ難いような位置に置いた。



「はい、ただいま。」と、にこにこしながら夏名は深町の隣に座ろうとしたので
あ、そこ湿ってるよ、と、彼はコンビニのビニール袋をMA-1のポケットから取り出して
ベンチに敷いた。

「わー、優しいんだ、先輩って。」と、ちょっとふざけたように笑う夏名。

最近の流行りなのだろうけれど、なんとなくそういう尖ンがった感じもちょっと深町の好みではなかったが
殊更それを指摘する必然もなく、夏名はそのままちょこん、とベンチに腰掛けた。


「きちんと食べないと、病気しますよー。」なんて、ころころ笑いながら言う夏名を見ていると
なぜか腹は立たないから、不思議なものだった。


深町は思う。高校生の頃も、こういう子は居たけれど.....あの頃は、お弁当を作ってきてくれたりして。
それがあまり美味くなくても、食べない訳にもいかずに....なんて事もあったっけ。


それを思うと、変なものを食わされない分、夏名の方が親切なのかなぁ、なんて思ったりもした(笑)

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