elevator_girl
「俺はまた涼子さんかと思った。ふーん、難しい字なんですね。」
と、深町が言うので
松之は「難しいか?あ、書き順が?」なんて、つい、いつものペース。
深町は負けずに「ま、書けるさ、レンシュウすればな」と。
レンシュウしなきゃ書けないのか?と、松之はリラックスしてきた。
「とっても仲、いいんですね。」と。彼女は涼やかに微笑むので
松之も深町も嬉しくなる。 やはり、美人の微笑みは良いものだあ...なんて思いながら。
「あ、苗字はなんて言うんですか?」と、深町はあつかましくも聞くが
彼女はにこやかに、「さくらい、と言います。」
桜....
松之は、出会った時の、あの、桜花舞い散る情景を思い浮かべていた。
「え、じゃ....あの日、最初に出会ったお堀端、覚えてますか?」と深町が言う。
彼女は頷く。
「あの時、桜吹雪が見えネエカー!!って感じの中から来たでしょ?諒子さん」
その喩え、ヘンだよ、と、松之が返し、いいじゃねぇか、そう思ったんだから、と
掛け合っている様が可笑しいのか、彼女はくすくすと笑ってくれたので
深町はまた、上気して「そう、それで、桜の精みたいだって俺、思ってたんです」