elevator_girl
そんなことないです、と、彼女がはにかむので、松之はなんとなく柔らかな気持ちになった。
ほんとうに,桜の花のようなひとだなぁ、と....
横顔を見ながら、とても幸せな気持ちになった松之だった。
その事を、松之は言えなかった。
いとも容易く、諒子さん、花のようです、
なんて言える深町の事を羨んだ。
「そうね、お二人は、風のようね。
音のようでもあるし...響き合って、自由で」
諒子は、そんな風に深町と松之の事を喩えた。
「素敵ですね、深町の変な比喩とはエライ違いだ」
「なんだよ、松。言葉はお前に任せてるって言ってるだろ」
二人のそんな掛け合いを、楽しそうに見、そして諒子は
「あら、柳さんって言葉担当なの?」
と、松之に。
松之は、ちょっとどぎまぎしながらも
「はい、一応文学部です。」と
やっとの事で普通に答えた。
どうしてなのだろう、深町とならいくらでも自然に話せるのに。
松之は、自分の気持ちが自由にならないことをもどかしく思った。
言葉、そうだ、手紙なら....。
「....あの、諒子さん?」
松之は、尋ねる。
「はい?」