elevator_girl
「あの子」の事を僕はどう感じているだろう.....。
咄嗟にモニター越しの画像を見て定型詩を思い浮かべたけれど、イメージとしては
麻のようだな、と感じていたように記憶する。
なんとなく、だけれども。
こういう連想は不思議だと思う。けれど、僕が思うには
洋裁が上手だった母のおかげで、幼い頃から色とりどりの布地を見ながら
育ってきたせいもあるだろう.....。
「なあ、シュウ?」と、僕は、彼の感覚を聞いてみたくなった。
「ん?」と、何気なく彼は返す。
「なんかさ、心の中に、こう、イメージが浮かぶ事ってある?色とか文章とか...。」
彼はすこし考えてこう言う。「んー、そうだな、やっぱり音かな。音、響いているイメージ・フィールド。音楽、みたいなカタチのあるものじゃなくて、響いているイメージ。」
「らしいね。」と、僕は思わず返し、感触に喩える自分の事を話した。
シュウは合点、と云う感じで「ああ、ありそうだよな。ほら、1年の時、教養過程で習ったろ?
原初体験の話。」
その理論は、人間が生まれてから最初に親しんだイメージに囚われる、と云うものだった。
いかにも理系らしい彼の意見に、僕もなんとなく頷けた。
こういうストレートなところが、シュウのいいところだと僕は思う。
僕は、なんとなく聞いてみたくなって「あの、ほら、エレベーターの子を見た時
どんなイメージがあった?」
シュウは、なんとなく照れ臭そうに「うーん、そーだなぁ...ふわ、と浮き上がるような
音空間を感じたんだ。音が響いている空間そのものが。」
「それで、Fm7-Em7-Dm7-Cm7 と、Icebrink luckがくっついたの?」と
僕はにこにこして。
「いや....あれはなんとなく、な」と、彼は、すこしハズカシそうに。