elevator_girl
....まったく。もう。あの性格が羨ましいよ。少し。
面と向かって美人だの、花のような人だの。
よくそんな事がふつうな顔して言えるものだな。
とはいえ、松之も内心、諒子とここで別れるのは
少し淋しい、とは思っていた。
...そうか、あいつ。
松之は、深町の友情に感謝した。
わざと、そうしてきっかけを作ってくれていたんだ。
「お家は遠いんですか?」と深町が言うと
いいえ、ここから20分程です、と
犬がゆっくりと振り返りながら先導する後を
深町と諒子はフォローし、すこし離れて松之。
二人の後をゆっくりと歩く。
遊歩道には、所々に花が咲いていて
ちょっとした花壇のようになっていた。
その、花の種類の話題とか、木の話とか
深町は、諒子の雰囲気を見ながら
話題を次々と変えて、話を続ける。
...ああいうところは、勉強になるな。と
松之はへんなところに感心した。
同い年をは言え、深町は松之よりも
世知に長けていた。それは彼の境遇が
そうした能力を授けたのだろう。
下町生まれの下町育ちだから、生来的に
コミュニケーションが上手なのかもしれないな、と
松之は思う。