elevator_girl

いい香りのアール・グレィが雰囲気を満たし
深町と松之は、諒子の向かい側の長椅子で
テーブルを挟んで。

上品な感じの白磁に注がれた紅茶は
ゆらゆらと湯気を立てている。
市街地の中で意外な程閑静なこの場所、
おそらくは周囲を囲む樹木が音を吸収するのだろうと深町は思考していた。

「あ、僕は深町...これは前に言いましたっけね。
生まれは東京の下町、蒲田です。こっちは柳、
彼は神奈川の片田舎.....。」

「片田舎はないだろ、厚木だよ」と、漫才コンビのように松之が返す。

諒子は、そのやりとりをにこにこしながら見ている。
斜め左から対面していた松之は
その笑顔だけ、それだけでとてもハッピーな
気分になれる。


...ずっと、こうしていたい。

そんな夢想をしていて、話題が進んでいるのに
気づかなかった。

「おい、松?」と言う深町の言葉に、ハッ!と。
我に返った松之は「あ、ごめんなさい。ちょっと.。」

と言うと、深町が「彼、この頃こうなんです。
困っちゃうなぁ、美人に会うと、こうで。」


と、深町が茶化す。松之は顔が赤くなってきて
それを自認し、恥ずかしさに更に顔が赤くなって
「あ...いえ、そんな事は....あ、いえ、諒子さんが
美人でないと言っている訳ではなくて...。」
と、しどろもどろになった。

諒子は、くすくすと笑いながら、あ、ごめんなさい
あんまりおふたりが仲がよろしくて、と..


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