elevator_girl
楽しい雰囲気だった。
深町は「じゃあ、お父様がお医者様?」と言うと
諒子の、春陽の光芒の如き笑顔は途切れる。
深町は、その変化を察し
「あ、すみません、変な事聞いちゃって。」
と言うと、諒子は、いいえ、気にしないで下さいと
そう言ったが、笑顔は途切れたままだった。
そして.....。
「わたし、東京でピアノの調律をしていたのです。」
深町は、雰囲気を取り戻そうとして
意図的に明るく「へぇ、凄いんですね。
俺が使ってるギターだって
今は自分で調弦できない人の方が多いんです。
機械を使わないと。」と。
諒子は、穏やかな表情に戻り、
そうですか、ギターは微妙なのでしょうね、と
深町が抱えて居たギターに視線を移した。
深町は「そう、僕らは路上ライブするんで
調子がずれたピアニカとか、アコーディオンとか...
木管が居るともっと大変です。温度でずれるし。」
と、矢継ぎ早に話した。
諒子は、テクニカルな興味を以て聞いている。
そう言う感じの所は、職人っぽく見え
松之は、自分の母や親類たちの
職人気質と共通のものを感じて
親近感を覚えた。