elevator_girl
諒子は、にこやかに深町と松之を眺め
「本当に仲がよろしいのね。ご兄弟みたいだわ」
と、言う。
松之は「諒子さんは、ひとりっ子なのですか?」


そう言うと、諒子の表情が曇る。
松之は慌てて「あ、ごめんなさい。僕、変ですね。」


いいえ、いいんです。と諒子はかぶりを振る。
さらりとした長い髪は、横を向くと豊潤で
野生的な若さ、を思わせた。そこに
松之は対比的な魅力を覚えた。

そんな、松之の想いとは無関係に、諒子は
静かな表情で「姉がいました。でも....
もう、13年になります。
今年で29になるはずでした。」と....。


平準な表情を装っているが、内心
やはり淋しいのだろう、くちびるが結ばれている。

深町はとりなす。「あ、ごめんなさい、
思い出させちゃって、松、お前も謝れ!」と。

松之は、その表情の変化に気をとられていて
..すみませんでした。と言うのがせいぜいだった。


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