elevator_girl

「でもさあ、なんか気になるな~、彼女。
なんか淋しそうだったの、お姉さんの事だけじゃないかも....。」
深町は、そう心配した。



松之は「いいじゃないか。別に。それでも。
何か、悲しみがあったとしても。
諒子さんの、喜びも悲しみも、全部、僕は好きになる。」




へえ、と深町は驚いた。
さっきまでは不安に怯えていたのになぁ。こんなに強くなれるものなのか。
と、親友の変化を頼もしく思った。




♪~......

メロディ。


ハミングをしながら、松之は歩く。
キャンパスへの道を。
付属図書館の階段を。
中庭のベンチの前を。

軽やかなメロディ。今日は
フレデリック・ショパンの練習曲 #10-3、
通称「別れの曲」。とはいえ、その題名は後付けだ。

だから、松之が別れを決意した訳では、勿論無い。

むしろ、その反対だ。

普段は割と寡黙な松之が、鼻歌を歌ったりするので
夏名など、先輩、きもちわるーい(笑)なんて言う。
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