elevator_girl

どこか、遠くへいきたいなぁ....。
少年時代に読んだ、小説のヒロインは
そう言いながら、心で旅をするのだった。

心の旅。


深町も、どこか遠くへいきたい、と
そう思うようになった。
それが何故かは、彼自身もよく分からない。
ただ、なんとなく放浪したいと思うのは
目前にある事柄が、何か息詰まった時...


親友、松之があまりにストレートに
諒子への好意を告白し、直向きに愛すので
それが、息苦しかったのもある。

ほぼ同時に好意を抱いた深町だが
松之の真摯な姿勢にはかなわない、と思う。
しかし...それだけに、果たせぬ思いのせつなさが
彼の胸に小さな嵐を呼んでいた。

..そのせいだろうか、どこか、遠くへ行きたいと
思うのは。


松之の姿を探しながら、深町はそんな風に
思う。


...あ。


共通教育棟の中庭、芝生のベンチに
松之の見慣れた背中を見つけた。

なんで、こんなところに居るのだろう。と
そっと近づく。

ベンチの対面に、夏名。
何か、クイズ本のような物を持って
松之と楽しそうにはしゃいでいる。


「じゃ、先輩、次行きますよ...
行政書士以外で、行政書士業務ができる資格者は?」と、夏名は楽しそうに。
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