elevator_girl
夏名のことを案じ、松之は
図書館の玄関先にある
古びたベンチ、テーブルが付いているそれ、へ
移動した。
銀杏の葉が、さわさわ、と涼しげな音を立てている。
風薫る五月などと表現されるが
本当に風に、初夏の香りが感じられるようだ。
銀杏の葉には仄かな芳香があるので
丘わたる風に、銀杏の香りが乗る。
そのこともあって、松之はこの場所で
街並みを見下ろしながら、本を読んだりするのが好きだった。
でも、今日は夏名が居るので
静かに読書、と言う訳にもいかない.....。
「あ、これね。うん、紹介状。」と、夏名に説明する。
「図書館のですね。誰を紹介するんですか?」と、詰問口調の夏名。
.....どうしてこう詮索したがるのかなぁ、と、松之はすこしうんざりする。
松之の母親もそういうタイプだったので、なんとなく、こういうタイプを忌避したくなる。
それもやはり、無意識下の影響だろう。
...だから。
静かなタイプの人がやっぱり松之は好きだった。
こんな、単純なところから相性、なんてものも決まってしまうのだろう。
それは、原初的プリ・プログラム。自分ではどうしようもないところにそれはある。