elevator_girl
駅前で人だかりが出来てしまって、おまわりさんが来てしまったので
僕等は、楽器を持って移動した。
シュウは、機材が多いから大変。僕は、彼の太陽電池とかアンプとかを
持って、地下道から国道をくぐって。
なんとなく、大通りを北の方へ向かった。
官庁街の閑散とした通りを抜けると、お城の跡公園に出た。
お堀には鯉が泳いでいたり、睡蓮が浮かんでいたり。
風が吹くと桜が散って、水面にピンクのヴェールがふわり、舞い降りるようで
とても綺麗だ。敷き詰めるように、純白からうす桃色の花弁が波紋にゆらゆら揺れている。
「なあ、シュウ」と、僕は黙って歩いていた彼に尋ねてみる。
「ん?」と答える彼に
「僕はさ、今、ヒューバート・ロウズの『BrandenBurg Concerto NO.3 1st.Mov.』みたいだな、ってこのお堀を見ててそう思ったんだ。
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シュウは「お前も今日はなんか、いい気持ちみたいだな。ん、その音、いいんじゃないか」
ストリートで演るのは難しいけどな、それは。」なんて言うので
相変わらず実際的な彼を微笑ましく思った。
僕は、どちらかと言うと夢想的なほう。彼は、実際的なほう。
でも、彼の方が心の奥底じゃromantistじゃないかな、って僕は思っている。
ちょっと、照れがあってぶっきらぼうに見えるけれど。
そう、あの....時。
あの子を見かけて、僕等ふたりは偶然、同じような気持ちになった。
それって偶然なんだろうか、それとも必然だったのかな....。
僕は夢想的に見えても、心の中は割と実際的。
そうでないと言葉を紡ぐ、なんて事は出来ないから.....。
音はそうじゃなくて、手癖とか感覚で行ってしまえるので
彼は僕よっか遥かに情緒的なんだろう、と、思う。