純粋少女と歪んだ魔法
狂い始めて、くるくると
単純に人を殺せと言われても、凶器なんて持っていない。
「あたしが人を殺す為の魔法を教えてあげる。」
ルイズは口の端をにぃっと吊り上げて、そう言った。
手を、何かを包み込むようにそうっと合わせる。
そして目を閉じてから、開けると同時に手を離す。
すると ー
ー 白い、小さな花びらが私の手の内から生まれた。
「わぁ…」
「ふふん、すごいでしょう。でもこれで人が死んじゃうのよ」
すると、花びらは私の手からひらりと舞い上がった。
そしてくるくる回りながら、すいっ、と扉に吸い寄せられた。
「来たのね」
「何が?」
「人、よ」
ルイズは笑った。
私は言った。
「その人を殺せば良いんだね」
舞い上がった花びらを、ベッドから降りた私とルイズは追いかけた。
扉を抜けると、見慣れたソファーがあった。
そしてその部屋も抜け、着いたところは。
赤い、廊下。
その先に少年がいた。
私の顔を不思議そうに見つめる少年。
その瞬間、少年は顔を歪めた。
「お姉ちゃん、変な顔」
私は目を見開いた。
同時に私はこの少年を憎らしいと思った。
私の体は勝手に動いていた。
楽しい。止まらない。面白い。あはは
手を前に出して、花びらを少年に近づけて ー
「殺れ」
花びらはピシッとひび割れて、姿を変えた。
白くて大きなヒトガタの何か。
ソレは口を目一杯開けて、
少年を食らった。
勝手に緩んでいく私の頬。
少年のいたところには赤い血が残った。
私は、
「あははははははははははははははははははっ!
いぃーーーーっひっひっひっ
あはっ、あっはははははぁぁぁあ!!!!」
楽しい。
今、とても。
本来こうやって殺したいのはお母さんのはずなのに、1人殺すだけでこんなにも楽しいなんて。
白くて大きいモノは元の花びらに戻った。
それをルイズは尻尾で拾い上げて、食べたのだ。
「そうやって食べてるんだね」
「これが一番美味しいのよ」
私は、この瞬間狂い始めた。
徐々に石は転がっていく。緩やかな坂を。
その坂が断崖絶壁になるまで