食人鬼
「1ッ、2ッ、1ッ、2ッ」
息を弾ませながら掛け声をかける。
毎朝の、朝練の前の習慣のランニング。
走るのには最適な土手がある。
誕生日に、母親に買ってもらったランニングシューズの白が太陽光に反射する。
「兄ちゃん待って、速い、速いよっ!」
息を切らし、ゼェハァゼェハァ言いながら赤月が走ってくる。
「何だ、こんなランニング程度で?」
「兄ちゃんが早すぎなんだよ!」
赤月がそう言うので、まだ余裕はあったが少し速度を落とす。
(朝練の前にくたばっていちゃ、元も子もないからな。)
俺が速度を落としたのを見て、抜かそうと思ったのか手をブンブン振りながら走ってくる。
最早ランニングではない。
俺の少し前に来た赤月。
Tシャツには汗がじんわりと滲んでいる。
俺はまた速度をあげた。