闇に染まった真実。



瞬時に蹴りを鳩尾に入れる。…よかった。足に巻かれていなくて。


あいつは床に転がり、鳩尾を抑えている。蹴られるなんて思ってもみなかっただろう。


しかも今までの私とは違う、重い蹴りだ。今のうちに逃げないと…!そうは思うが、手首は全く動かなくて。


あいつは怒りに染まった眼差しでこっちを見てくる。

「っは!ヤるまえに殴ってもいいんだぞ?昔みたいにな!」


…やっぱり。何も変わってないんだ。本当は少し、ほんの少しだけ期待していたんだ。「もしかしたら」「次は」って。刑務所に入って、変わってくれたんじゃないかって。


でも、一気にそれはなくなった。この人は本当に私のお父さんなの?なんで、私だけいつもこうなの?やっと、大切な仲間に出会えたのに…。


心が、あの頃に戻っていくような気がする。一番思い出したくない過去が鮮明に蘇っていく。

顔を殴られ、足を蹴られた。


…痛い。痛いよ…。


私は皆と出会えて、嬉しさや喜びを、感情を知ってしまったから。殴られた顔も、蹴られる足も痛い。


あの頃はどうやって受け入れていたっけ?


….思い出せないや。

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