翻弄カレの攻略法。~甘い罠にはご注意ください~
彼のスーツからはほんのりタバコの匂いが香った。
思わず見いってしまって、すっかり挨拶しそびれていた私は、慌てて腰を折って彼に自己紹介をする。
「こちらに配属になりました瀬川菜月です。よろしくお願いします」
「瀬川さんね。結城颯太(ソウタ)よろしく。瀬川さんの指導係だから、分からないこととかあったらすぐに聞いて」
彼はそう言って微笑んだ。
「瀬川さん、今日は挨拶だけで、明日から本格的に働いてもらうから。緊張もしてるだろうけど、明日からよろしく」
「はい!明日からよろしくお願いします」
挨拶を済ませて、今日はこれだけで帰ることになった。
行きよりも気分が楽になった。
一緒に仕事をする人達も、場所も、雰囲気も分かって、自分の居場所が一つ増えたような気分だ。
会社の横にある駐車場に先程停めた愛車がある。車のキーを差し込むと、勢いよくエンジン音が鳴り、車をゆっくりと発進させた。