印堂 丈一郎の不可解な生活
「やはりそうか」

咢が手にした刀の刃を返す。

「師匠に家族はいなかった。それを孫娘などと偽るとは、何ともお粗末な。一体貴様は何者だ?調息使いを内部から崩壊させる為に近づいて来た化け物か?」

「……」

私はゆっくりと顔を上げた。

「あのお爺ちゃんは…本当に優しい人だった」

心底そう思う。

サーと共に化け物狩りに追われ、サーとはぐれ、追い詰められて瀕死の重傷を負った挙句、頭部を損傷して記憶喪失に陥った私を、トドメを刺す事なく匿い、人間として、孫娘として今まで育ててくれた。

化け物だからと命を奪うような事をせず、人間として生きる道を私に示してくれた。

調息使いとして、それは間違った行いだったのかもしれない。

だけど私にとっては、本当に優しい家族であり、本当に優しいお爺ちゃんだった。

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