印堂 丈一郎の不可解な生活
手裏剣の動きは、まさしく咢の自由自在だった。

三枚が別々に飛び交っては、全方位から私の体を斬り刻む。

「だがその程度の傷では再生してしまうだろう」

両手で手裏剣を操りながら、咢は言った。

「手裏剣をお前の体内に打ち込んで、内臓を高速回転でグズグズに切り刻んでやる!後は再生前に調息を直接流し込んで滅殺すれば終いだ!」

化け物でさえ見切るのが困難なほどの高速で襲い掛かってくる三枚の手裏剣!

しかしそれを。

「!?」

割って入った丈一郎が、調息を込めた拳で弾いた!

「ってぇ~っ…!」

無論彼も無傷じゃない。

手裏剣を弾いた拍子に、拳を傷つけてしまっている。

「何故邪魔をする丈一郎!まだ分からないのか!」

「ああわからんね」

丈一郎は私を庇うように立ち、咢を睨んだ。

「貴遊はさっきから一度も、お前に対して攻撃してねぇじゃねぇか。それを一方的に切り刻んでよぉおぉ…まるでお前の方が悪者みてぇだぜ咢」

「攻撃し始めてからでは遅かろう。そいつは滅びの五人なのだぞ」

「知らんぜ、俺にとっちゃあ貴遊は貴遊だ」

そう言って、丈一郎は咢に立ちはだかる。

「どーしてもっつーんなら、貴遊は俺がキッチリやっつける。それまでお前は貴遊に手ぇ出すんじゃねえぜ。紳士が淑女を丁重に扱うようになぁあぁあ」

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