印堂 丈一郎の不可解な生活
不可解序の口
(ノォオォォオォォォォオォォォッ!)

心の中で、そんな風に丈一郎は叫んだらしい。

無理もない。

普通の人なら、心の中どころか本当に悲鳴を上げている。

だってグール。

墓を掘り返して死体を食べるっていう、アラブの伝承の化け物だ。

実際にお目にかかる人なんて、いないだろう。

(幾ら俺がゾンビとかモンスター萌えの厨二病だっつっても、こりゃねぇぜ神様よぉおぉぉ)

どんな相手でも怯まず喧嘩を売る丈一郎が、二歩三歩と後退り。

「!」

何かに躓いて転倒する。

その躓いたものに、また戦慄した。

グールの食べ残しなのか。

そこには人間の右手…手首より先だけが、無造作に転がっていた。

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