印堂 丈一郎の不可解な生活
吸血鬼に血を提供するなんて、誰にでも出来る事じゃない。

ましてや人類の怨敵とまで言われる滅びの五人の一人である私に。

そのお礼と言っては何だけど。

「丈一郎、そこの棚を開けてみて?」

私は骨董品屋の陳列棚の引き出しを指差した。

「ここか?」

言われるままに引出しを開ける丈一郎。

そこに入っていたのは、黒い手袋だった。

見た目は、何の変哲もない革手袋といった風情。

だけど。

「お爺ちゃん秘蔵の革手袋…調息を伝導させるの。咢が持ってた刀や手裏剣を同じような物ね」

私は丈一郎に説明して聞かせる。

「これを…俺に?」

「うん」

頷く私。

「お爺ちゃん、丈一郎が一人前の調息使いになったら渡すつもりだったみたい」

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