印堂 丈一郎の不可解な生活
困ったようにボリボリと頭を掻く丈一郎。

しばらく考えた後。

「今更お前が真祖だセシル・カイルだ言われてもよぉおぉ、俺にゃあよー分からんぜ。爺さんとこに調息法の弟子入りした時から、お前は『辻本 貴遊』っちゅー名前で頭の中にインプットされちまってるからな。咢みてーに割り切ってお前をぶっ殺すのも、人類の敵だっつって敵に回すのも無理だ」

実に単純明快な、そして私にとっては心強い言葉を口にしてくれた。

「私が裏切るとは…思わないの…?」

「そん時は容赦しねぇがよぉおぉ…お前、裏切る予定なんか?」

「うっ、ううんっ、そんなつもりはないっ、ないよっ!」

慌てて手を振る私。

「じゃあ別に何も変わらん。俺の中ではお前は今まで通りの『辻本 貴遊』だし、付き合いも今まで通りと変わらん。お前の飯に、たまに俺が献血せにゃならんってだけだ」

< 118 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop